2021/10/14

2021/10/14

 秋の食材の話をします。10月頃になると栗、サツマイモ、梨、ブドウなど多くの食材が旬を迎え豊富に生産され、いつもより食欲が増す、といわれることから食欲の秋と呼ばれます。気温の低下による体の変化も関係しているようです。外気温が下がると体温を保持するために熱生産が活発となり、基礎代謝が高くなります。すると、自然とエネルギー消費が高くなり、失ったエネルギーを取り戻そうとして食欲が増すというわけです。だんだんと寒くなってくる秋に食欲が増すのは体の仕組み的に当然なんですね。

 秋の食材の一つに栗があります。栗はブナ科の期の一種で、山に自生している栗はシバグリ、ヤマグリと呼ばれます。市販されている栗は自然のモノよりも大粒であるそうです。栗と言われて思い浮かべる部分は果実で、いがと言われるとげとげの殻の中に3個できます。成熟する前のいがは緑色で、9~10月ごろに茶色に成熟するといがが自然と割れて、中の果実が見えるようになります。とげとげの部分は皮、茶色の硬い部分が果肉、食べるところが種であるそうです。

 くりの生産者は、収穫の時期になった栗の木を揺らし、落ちてきたイガグリを拾います。皮であるイガイガを手で向いて中の果実を収穫します。収穫時点では底の部分は白いままとるそうです。「桃栗三年柿八年」と言われ、果実が実るまでの期間は長いです。主な栗の産地は茨城県熊本県愛媛県岐阜県、埼玉県です。この5つの県で全国の約6割を占めているそうです。栽培自体は最低気温が -20℃を下回らない地方であれば可能で、全都道府県でみられます。栗の名産地の丹波地方(京都府大阪府兵庫県)では「丹波栗」としてブランドされ、栗菓子や栗酒などの製造が盛んです。

 栗とならんで秋のイメージがあるのが柿です。一般に実が渋い「渋柿」と、実が甘い「甘柿」に分けられます。沖縄県を除く日本の全都道府県で栽培・出荷がされていますが、北海道では寒すぎるため、渋柿がごくわずかに生産されているだけです。和歌山県が収穫量の日本一で、市町村別では奈良県五條市が全国一位です。甘柿は温暖な気候でないと甘く育たないため、温暖な地方でのみ生産されています。柿は生産量、作付け面積ともに少しずつ減少しているようですが、果物ではミカン、リンゴ、ナシに次ぐ生産量があります。大きな種を取るのが面倒なイメージがありますが、ブドウなどほかの果物と同じく品種改良された種なし柿もあります。「柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺」というのは、正岡子規が読んだ俳句ですね。法隆寺に立ち寄った後、茶店で一服して柿を食べると、途端に法隆寺の鐘が鳴り、その響きに秋を感じた、というの句です。法隆寺境内に正岡子規の筆跡によるこの句の句碑があります。全国果樹研究連合会はこの句が読まれた10/26を柿の日としています。

 同じく、秋に旬を迎えるサツマイモは、ヒルガオ科サツマイモ属の植物で、食べられるところは塊根と呼ばれる肥大した根っこです。じゃがいもとは分類上はまったく異なるもので、じゃがいもはナス科の植物です。じゃがいもはナスに似た花を、サツマイモはアサガオに似た花をさかせます。じゃがいもは「ジャカルタから来たいも=じゃがたらいも」がなまってじゃがいもに、サツマイモは、中国を経由して薩摩地方に伝わったのでサツマイモと呼ばれるようになりました。サツマイモは、痩せた土でも実りやすく、江戸時代から日本中で広く栽培されてきました。春に苗を植えて、晩夏から秋にかけて収穫します。主な生産地は鹿児島県、茨城県、千葉県、宮崎県で、この上位4県で全国の生産量の8割を占めます。生産地域によりブランド化されている品種も数多くあり、鹿児島県の安納芋、徳島県の鳴門金時などがあります。サツマイモを油で揚げ、甘い蜜を絡めたお菓子を大学芋といいますが、この名前は大正から昭和にかけて、東京の神田近辺の学生街で大学生が好んで食べていたため、ついたと言われています。

 ブドウは、8~10月にかけて旬を迎えます。北海道から九州までの広い範囲で生産されています。世界ではワイン生産用が7割を占めるのに比べ、日本では生食用が9割近くを占めるそうです。品種的には、日本で最も栽培されているのは「巨峰」という品種で、育成地から見える富士山の雄大な景観が名前の由来です。山梨県が主な生産地です。

 秋にはおいしい食材がたくさんありますね。今は生産者と消費者を直接つなぐサービスなどが発達して、旬の食材を自分で選んで購入することが容易になっています。食材を吟味して秋の食欲を満たしてみてはどうでしょうか。